素地調整 ― 塗装は下地なり ―

base Adjustment
  1. DIYホーム
  2. DIY初心者ガイド
  3. 素地調整

素地調整 ― 塗装は下地なり ―

塗装において最も重要な工程が素地調整(下地処理)です。木材塗装であれば木の状態が、仕上がりや塗料の塗布量に影響し、塗布量は塗装の耐久力に大きな影響を与えます。

新しい木材なのか古い木材か、塗料が塗られているか、油分やヤニがでているかなど木材の状態により素地調整の仕方は変わってきます。丁寧な素地調整が塗装の成否に直結します。時間をかけて行いましょう。

素地調整

木材は水分を含んでおり、塗装前の木材含水率は18%以下が理想です。しかし新築時などは乾燥材であっても20%以上の含水率である事が多いです。塗料が染み込むべき場所に水分が入っているので、塗布量が少なくなります。新しい木材の塗り替えは、早めに行うなどの工夫が必要です。雨が降ったあとは木材が水を大量に吸っているので、含水率が非常に高くなっています。数日しっかりと乾燥させましょう。また、高気温時には塗料の乾燥が加速して刷毛斑が起きやすくなります。気温や木材温度も塗装に影響を与えます。

木材の含水率は18%以下

汚れのない塗装面

・新しい木材の場合

ゴミ、ほこりなどがあれば、ボロ布などで塗装面上を清掃します。
木材表面が平滑面(プレーナー仕上げ)の場合と、粗挽き面(ラフソーン仕上げ)の場合では、塗料の塗布量に大きな差が出ます。平滑面と比較すると粗挽き面は塗布量が多くなります。外装材の場合は塗布量を増やすために、粗目のサンドペーパー(#80~120番)で素地調整を行う事をお薦めします。

南洋系硬質材など硬い木材は塗料が浸透しづらく、乾燥遅延が起こる可能性があるので注意が必要です。
また、硬い木材は塗料の染み込みが悪いので木材表面に塗料が留まるだけで早期に剥がれてしまう場合が多くなります。
数年間放置した後に、表面にクラックなどが入ってから塗装する、さらに粗目のサンドペーパーでしっかりと木材表面を荒らして塗装する事をお薦めします。
〈南洋系硬質材の例〉イペ、チーク、ジャラ、アゾベ(ボンゴシ)、アサメラ、セランガンバツ、ウリン(ベリアン)、マサランデューバなど

・古い木材の場合

時間の経過した木材表面は脆弱です。そのような木材表面に塗装をしても、木材繊維がどんどん剥がれて行くので、同時に塗料も剥がれてしまいます。古い木材の場合は、弱っている木材表面をしっかり素地調整で除去する事が非常に大切な作業です。粗目のサンドペーパー(#80~120番)で脆弱層を除去します。高圧洗浄機などで水洗いをして脆弱層や汚れを除去した場合は、十分な乾燥時間(数日)を取って木材含水率を下げましょう。乾燥後、毛羽立ちが激しい場合は粗目のサンドペーパー(#80~120番)で毛羽を除去します。

ラフゾーン仕上げ

木材の素地調整で塗布量が変わります。
塗布量は耐久力に影響します。

ヤニや油分の多い木材

固まったヤニはヘラやスクレーパーで削り、柔らかいヤニはエタノールや塗料用シンナーで拭き取ります。ヤニの除去は気温が高いときに行うと効果的です。ヤニの多い木材で脱脂乾燥していない場合、数年間にわたってヤニが滲み出て、塵埃によって塗装面を汚染することがあります。

ヒノキ(檜)やヒバ材など油分が多い木材は、表面に油が浮いています。その上に塗装をすると綺麗に塗装ができない事があります。ラッカーシンナーなどの有機溶剤で油分を拭き取ってから、粗目のサンドペーパー(#80~120番)で素地調整をしてから塗装します。

→ヤニや油分を除去した後は、汚れの無い塗装面と同じ処理をします。

カビ、シミ、鉄汚染の発生する無塗装面

金属以外のブラシやタワシを用いて(金属ブラシは鉄汚染の原因となります)水洗いをします。鉄汚染、カビ、シミなどの汚れは市販されている木材用のカビ取り剤、漂白剤、アク抜き剤などで取り除きます。鉄汚染した木材は5%シュウ酸水溶液を塗布後、5%リン酸一ナトリウム水溶液を塗布して処理します。再発防止のために鉄汚染の原因となる鉄等は錆びないステンレス等に交換します。

※シュウ酸は劇物のため、薬局で購入の際、押印が必要です。作業前に購入品のラベルの記載内容を確認いただき、作業時には手袋や保護眼鏡を着用ください

汚れを取り除いた後は、仕上がりに悪影響を及ぼさないよう十分に水洗いを行い、水洗後は木材を乾燥させます。乾燥が不十分だと仕上がりが悪くなり、塗装不良の原因にもなるので注意が必要です。

→カビ、シミ、鉄汚染を除去した後は、汚れの無い塗装面と同じ処理をします。

その他

セメント系のカスや接着剤は、変色や吸い込みムラの原因となるため、研磨またはヘラでできるだけ取り除きます。木材表面に付着した油分、手垢などは、有機溶剤や中性洗剤で拭き取り、中性洗剤を使用した場合は、十分に水洗・乾燥を行います。

→その他の汚れを除去した後は、汚れの無い塗装面と同じ処理をします。

・不燃(準不燃、難燃)木材

不燃木材に注入している薬剤は親水性が高いため、湿気を帯びたり水がかかったりすると必ず液だれや白華現象が発生します。よって、ほとんどの不燃木材に水性塗料を塗装する事はできません。不燃木材には専用のキシラデコールUAをご使用ください。(キシラデコールUAは業務用商品です)

・加圧式注入保存(防腐・防蟻)処理材

十分乾燥していれば塗装可能です。緑色をした防腐処理木材が多いので、好みの色に塗装する事が難しくなる事があります。試し塗りをして色を確かめましょう。防腐剤が大量に木材に注入されているため、塗料の塗布量が少なくなり着色が薄い、色落ちが早い事が予想されます。また、防腐剤のブリード(染み出し)が発生するので注意が必要です。

・焼杉(焼板)の場合

焼杉(焼板)の表面は炭化層つまり炭に成っているので、時間と共に風雨で炭が剥がれ落ちていきます。炭が剥がれて木材表面が露出している部分と炭が残っている部分が、まだらに成っている事が多いです。焼杉に塗装をする場合は、炭化層をすべて電動サンダーやブラッシングで落とす事が望ましいです。炭の上に塗装を行っても、炭が剥がれると一緒に塗料も剥がれてしまうからです。しかし、大面積の場合はすべての炭化層を落とす作業は、非常に大変です。現実的には炭が取れると塗装も剥がれる事を前提に、できるだけ素地調整で炭を落として、剥がしきれない炭化層は、そのまま上から塗装をする事が多いです。

キシラデコール塗装面

サンドペーパー、ブラシ(金属製は不可)、ボロ布などを用いて塗装面のゴミ、ほこりなどを除去、清掃します。時間の経過した木材表面は脆弱なので、粗目のサンドペーパー(#80~120番)で脆弱層を除去します。脆弱層を除去する事で、木材表面のカビ、藻、鉄汚染なども一緒に除去できます。高圧洗浄機で水洗いをして脆弱層や汚れを除去した場合は、十分な乾燥時間(数日)を取って木材含水率を下げます。乾燥後、毛羽立ちが激しい場合は粗目のサンドペーパー(#80~120番)で除去します。

キシラデコールに代表される含浸形塗料は、塗替え時に明るい色を塗装しても下地が透けるので、明るい色が見えません。明るい色を塗るためには塗料を剥離するか、造膜塗料を使う必要があります。塗料を剥離する場合は木材塗料の剥離剤「剥楽」をお使いください。造膜塗料を塗装する場合は、キシラデコールコンゾランもしくはコンゾランをお使いください。(剥楽とキシラデコールコンゾランは業務用商品です。コンゾランはDIY用商品です。)

キシラデコール以外の含浸形塗料塗装面

キシラデコール以外の木材保護塗料、オイルステイン、クレオソート、撥水剤などが塗装されている場合は、まず水をかけて撥水性を調べます。

撥水性がない(水がすぐ染み込む)場合は、キシラデコールと同じタイプの含侵型塗料であると推測できます。よって、キシラデコール塗装面と同じ処理をします。

撥水性が残る(水が球状に残る、水の染み込みが遅い)場合、そのまま塗装すると塗料が弾かれる、塗装ができても耐候性低下の原因となるので撥水性がなくなるまで、ペーパーがけやブラッシング(金属ブラシは不可)処理をします。とくに、クレオソートや撥水剤で処理された材の場合、撥水性がなくなるまではキシラデコールは塗装できません。

造膜形塗料塗装面

キシラデコールなどの含浸形塗料を再塗装する場合は、造膜している塗膜を完全除去する必要があります。含浸型塗料は木材に染み込ませる塗料なので造膜した塗膜があると塗装ができません。電動サンダー、高圧洗浄、塗膜剥離剤などで旧塗膜を完全に除去します。塗膜を除去した後は、汚れの無い塗装面と同じ処理をします。

造膜形塗料を再塗装する場合も、塗膜を完全に除去する事が望ましいです。劣化している塗膜の上に塗装をしても劣化塗膜から剥がれたり、割れたりします。劣化している塗膜は電動サンダー、高圧洗浄、塗膜剥離剤などで除去します。除去しきれない強い塗膜は、目荒しをする事でキシラデコールコンゾランもしくはコンゾランについては塗装が可能です。他の造膜形塗料は各メーカーの使い方を確認しましょう。(キシラデコールコンゾランは業務用商品です。コンゾランはDIY用商品です。)